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MESSAGE
「戻ってくるわけがない」
なのに、延岡に戻ってきた。
1998年。18歳だった私とそれほど歳の変わらないIT起業家が注目をあつめている時代です。延岡に生まれ育った私は「東京に行けばいろんな経験ができる」とITを学べる東京の大学にすすみました。延岡に戻ってくるわけなんてないと思っていました。でも、ご覧のとおり、今は延岡ではたらいています。なにがあったのか。きっかけは、新卒で入社したシステム会社で営業マンをしていたときに出会った、ある社長さんの言葉でした。「親が元気なうちに帰ってあげたらどうだ?」社会人1年目なら聞き流していたと思います。でも、当時は5年目。いろんな社長さんから経営のおもしろさを聞いていましたし、何らかのカタチで家族に恩返したいという思いが強くなっていた時期でもありました。父の後を継げる状態なのは家族で私だけ。このまま帰らないのは親不孝かな、と思い、帰ることを決めたんです。
「できない」をやる。
「前例がない」もやる。
帰って知りました。経営危機だということを。そこでまずやったのが人員の削減です。できるわけがないといわれました。でも、やりました。当時のこされた道は人を減らすか会社をつぶすかの2つです。もちろん、つぶすわけにはいきません。人を減らさなければいけない理由と今後の戦略を社長に説明して、希望退職者を募る許可をもらいました。また、会社がかわろうとしていることを外に伝える広報活動もやりました。アワードに応募して『攻めのIT経営中小企業』や『宮崎県成長期待企業』に選んでもらいました。ホームページやSNSでの発信を強化したのもこのころです。鉄工所がそんなことまで...と思われるかもしれませんが、必要だと思ったら前例がなくてもやる。
それが今の池上鉄工所という会社なんです。
黒子からの脱却が、変革の第一歩。
中小企業が「大手企業を支える黒子」というスタンスで生き残れたのは日本が成長していた時代だけ。人口が減り、成長が止まったこれからの時代は、中小企業が強みや魅力を自ら発信して、自分たちの仕事はカッコいいんだ、誇れる仕事なんだというイメージをつくっていかなければいけません。その役割を、若いみなさんに任せたいです。そして、モノづくり業界に変革をおこせる会社に育てていってほしいです。経験がないから...なんて心配いりません。いま活躍している職人もはじめはみんな素人でした。彼らからたっぷり教えてもらってください。「見て学べ」なんていう人はいません。そんな時代じゃありません。すこしでもはやく技術を身につけてもらうためにサポートできる人ばかりです。ものづくりが好き。チームで何かに取り組むのが好き。そんな気持ちをもったみなさんとお会いできる日を心待ちにしています。
松田拓也